炭火

うちの家には、通販で買った囲炉裏がある。人に言うと、「エッ、床を掘って作ったの?」とびっくりされるが、座卓の真ん中に天板があり、それをとると、炭が焼けるようになっているもので、結構、使い勝手がいい。

3年ほど前、たまたま朝刊と一緒に配達された家具のチラシを見て、「ふーん、囲炉裏なんかあるんや」と旦那に言ったら、珍しく乗ってきた。当時、食卓テーブルとイスを使っていたが、低い家具のほうが部屋がゆったりするからええんちゃうか、とかなんとか。

囲炉裏には長方形と正方形の2種類があり、値段は長方形のほうが高かったが、座卓の面積を計算すると同じ。正方形のほうが面白いだろうということで、それに決めて注文した。

2週間後ぐらいに囲炉裏がやってきた。厚みが12〜13センチもある集成材の天板で、濃い茶色。和風居酒屋の座卓みたいで雰囲気はいい。しかし相当に重い。これをリビングに組み立てて、囲炉裏が完成した。

早速、炭を買って煮炊きにチャレンジした。鍋は無理だった。鍋底全体を温めようとしたら、炭がたくさんいるし、火力が調整できない。ガスコンロでしっかり煮えたおでん鍋などを載せるにはちょうどいい。

しかし、焼き物はなかなかオツである。生魚や肉などは炭に汁が落ちて煙がたつので、干物やウインナー、芋などがちょうどいいことがわかった。子どもの晩御飯というより、おやじの酒の肴である。

とはいえ、炭を熾すのに時間がかかり、いい塩梅になったころには焼くものがなくなり、あとは炭のじんわり赤い炎をぼーっと眺めている。炎を見るというのは気持ちのいいものである。

ただ、困るのは換気扇を回し、部屋じゅうの窓を開けても、ガス警報機が鳴ってしまうこと。ピポピポとそれはそれはうるさい。ときどき、ガス警報機のコンセントをはずし、風が素通りする寒い部屋で服を着込んで、囲炉裏を囲むのである。

一見、風流だが、修行のような冬の夕食を過ごすことになる。