再会

北風が肌を刺す、寒い気候が続くようになった。たまに姉と会うと兄の話題になるのだが、最初は放っておこうとは言ったものの、私は「この寒さで外で寝ているときっとカラダを壊すだろう」と言ったりもした。そのうち姉のほうから「あのとき、探していたら・・・という後悔はしたくないから探しに行こう。甘い顔をしたら付け上がるから、本人がどうしたいかを確認し、きょうだいとして出来ることだけやる」と言いだした。

私も「後々後悔したくない」というまことに自分勝手だと思うが、同様の心配をしていた。そして手がかりは、警察署からの電話のとき、兄の寝泊りをしているところが、地元の大きなA公園という情報を聞いていたので、再度その警察署に電話をしてみた。A公園はかなり大きいので、どのあたりに兄がいるかを知りたかったが、軒下だろうということしかヒントは得られなかった。

そして、年も押し迫るある日、私と姉は意を決して、A公園という唯一の手がかりをたよりに早朝出発した。大きな公園だから、探すのにとても時間がかかるだろうし、とことん探して見つからなかったら、諦めようと思っていた。

電車を乗り継ぎ、A公園に着いた。聞いたとおり、大きな公園でどこから探そうか気が遠くなった。まず目に付いたのはあちらこちらに点在するブルーシート。それらはテントのような使い方ではなく、荷物をシートでくるみ、紐で縛ってあった。たまたま近くにあった植え込みに男性がいたので、姉が尋ねた。

「これは荷物ですか? 普段、みなさんはどこに寝ているんですか?」
すると40代前半ぐらいのその男性は「みんなは軒下に布団を敷いて寝ている。荷物が荒らされないように当番で見張っている」ということであった。

他の植え込みを覗いても人影はない。こんな探し方ではゼッタイに見つからないなどと言いながら歩いていると、図書館が見えた。

姉は「あいつのことやから、ここにいるかもしれないなあ」と言い、二人で中に入った。兄は本が好きだし、図書館にいると寒さをしのげる。なかにはホームレスらしき男性が結構いた。

アレも違う、コレも違うと思いながら探していると、ふと机にうつ伏せて寝ている男性が目に付いた。姉が指差し「アレや!」。私もびっくりした。なんてカンタンに見つかったのだろう!

そして寝ている兄の肩を揺らして起こすとまさしく、兄であった。兄は私たちが突然目の前にあらわれ、呆然とした表情になった。姉は「ちょっと、外に出ようか」と言い、3人で図書館をあとにした。